9 月 29 日読了。
「平手打ち」★★★
裕福なサラリーマンが住む町に「連続平手打ち魔(シリアルスラッパー)」が現れたら? 日常の謎としてそこそこ面白い謎の提示と展開をしてもどうせ合理的な解決がつかない*1とわかってるとなんとなく冷めちゃう。平手打ちの意味するところの考察は面白いけど、想定の範囲を出ない。
「闇と未知の物語集、第十四巻「白い手袋」」★★★★★
高校最後の年にできたガールフレンドは手の甲を掻く癖があった。「手術」で学校を休んだ彼女は次に登校してきたときは白い手袋をしていて、その下を見せようとはしなかった。
面白かった。隠されていることを隠すことができないタイプの秘密というのがあって、この場合は手袋の下の手がそれにあたる。そしてその異形の手はまたなにかを隠している。それは引っかき癖に対する罰なのだろうか? それともほかの何かの? こうして秘密の探求は無限に続く。
わたしが一番好きなミルハウザーはエドウィン・マルハウスなのだが、ミルハウザーが少年の目を通して描く世界は手触りが完璧でたぶんミルハウザーはまだ少年なんだと思う。
高校の最上級にしては性的な描写が極端にないなと思っていたら案の定後半で手袋の下を見せる代わりにブラジャーを外そうとするわけだが、胸は隠されてはいても何が隠されているかは隠されておらず(ブラジャーの下には当然おっぱいがあるし、まぁそれが陥没乳首だったりそういうことはあるかもしれないけど、その程度だ)、手袋の下とは根本的にはわけが違うのだ。
「刻一刻」★★★★
お上品なニコルソン・ベイカー。ミルハウザー文体を使ってみたくなったときに読み返すかもしれない。
「大気圏外空間からの侵入」★★
宇宙空間からやってきたのは増殖する黄色い綿毛だった。しょーもな。
「書物の民」★
しょーもな。
「The Next Thing」★★★
大企業が静かな町を静かに侵略する。ゆったりとした即落ち二コマっていうことならおれはディッシュの「ソクラテスの死」のほうが好きだがね。フフン。
「私たち異者は」★★★★
>ある日目覚めると、ベッドに横たわり動かぬ自分を見下ろしていた私は、事態を呑み込めないままさまよいだす。やがて出会ったある女性との奇妙な交流とその行方を描く。
ナボコフの「密偵」でも見たなこの感じ。まぁ先に思い出したのはディッシュの『ビジネスマン』なんですが……*2。
まだ名前の付いてない感情は確かに表現されているのかもしれない。ミルハウザーは体外離脱したことありそうね。