Akosmismus

Me, poor man, my library was dukedom large enough.

2020-01-01から1年間の記事一覧

『赤村崎葵子の分析はデタラメ』「ラブレターを分析する」を分析する

技巧的な論証は、ほかの技巧的なものがすべてそうであるように、ただ選択の問題です。何を話し、何をいい残すかを心得ていさえすれば、どんなことでも好きなように、しかも充分に説得力をもって、論証することができるものですよ。 ——アントニイ・バークリー…

記憶と思い出について、あるいは金魚と腹痛と短編小説

始皇帝 中国は広い国だ。秦の始皇帝は紀元前三世紀にこれを統一したという。あれだけ広大な土地をひとりの男が支配するというのは、じっさいにはどういう現象なのだろうか。わたしが支配しているといえそうなのは都内の七畳程度のワンルームにすぎないが、と…

ヤスミナ・カドラ『カブールの燕たち』

カブールの燕たち (ハヤカワepi ブック・プラネット) 作者:ヤスミナ・カドラ 発売日: 2007/02/23 メディア: 単行本 ブックプラネット全部読む第 2 弾 كابلがカーブル表記じゃないと全身がムズムズしてくるが、フランス語だと Kaboul なんですね、じゃあカブ…

デイヴィッド・マークソン『ウィトゲンシュタインの愛人』

ウィトゲンシュタインの愛人 作者:デイヴィッド・マークソン 発売日: 2020/07/17 メディア: Kindle版 つまら~ん。 『論考』の世界観をパロディしたというよりは、論考を最大限に誤読したアホの世界観をパロディしたようなかんじがする。論考の独我論を現象…

パオロ・ジョルダーノ『素数たちの孤独』

素数たちの孤独 (ハヤカワepi文庫) 作者:パオロ ジョルダーノ 発売日: 2017/02/28 メディア: Kindle版 ハヤカワ epi ブック・プラネットという海外文学の叢書がかつてあって、2007 年から 2010 年のあいだに 16 冊刊行して終わった。名前からして明らかなよ…

David Foster Wallace "Good Old Neon" について(続き)

前回の続き。 2. Good Old Neon について(もうちょっと細かく) クリシェがクリシェとしての身分を獲得するのは、それらがあまりに明白に真実だからである。 ——デイヴィッド・フォスター・ウォレス(Infinite Jest, p. 1040) 2.1 GONe と明白な隠喩 隠し立て…

David Foster Wallace "Good Old Neon" について

0. David Foster Wallace について デイヴィッド・フォスター・ウォレス David Foster Wallace (DFW) は 1962 年 2 月 21 日生まれのアメリカ人作家で、生年月日がチャック・パラニュークとおなじなのだが、パラニュークとの共通点は生年月日だけでない、実…

「生者の妻たち」?――ホーソーンの「死者の妻たち」における夢の不在について

以下はMark Harris の The Wives of the Living?: Absence of Dreams inHawthorne's "The Wives of the Dead*1" の全訳である。 「生者の妻たち」?――ホーソーンの「死者の妻たち」における夢の不在について マーク・ハリス 不相応にも無視されてきた「死者…

『宇宙の妖怪たち』

宇宙の妖怪たち (1958年) (ハヤカワ・ファンタジイ) 作者:中村 能三 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 1958 メディア: 新書 銀背。函つきで 200 円だったので嬉しくなって買ったが函を綴じてるホチキスが錆びてて本の地がつぶれてたりした、悲しい。函は輸…